お知らせ・トピックス
足立区立東綾瀬保育園における午睡対応を視察しました
2025年1月29日に、足立区立東綾瀬保育園を訪問し、午睡時間を一律にせず、一人ひとりの子どもが眠ったり遊んだりすることを選択できるように配慮されている保育現場を視察させていただきました。
視察のきっかけ
令和6年12月の一般質問で、公立保育所における午睡について取り上げました。(詳細はこちら)
質問の中で、保育所保育指針にあるとおりに午睡が一律とならないよう配慮できている先進自治体の事例として、足立区作成の「保育実践振り返りシート」を紹介しました。
同シートでは、「虐待等の行為」に関する確認事項の中に、「4・5歳児は一人一人の状態を把握し、午睡の必要の無い子どもを無理やり寝かせていない」という項目が記載されています。
足立区の公立保育所における実際の午睡時の対応について調査すべく、足立区立東綾瀬保育園を視察させていただいたうえで、制度面については足立区子ども家庭部子ども施設指導・支援課の方々からもお話を伺いました。
足立区立東綾瀬保育園における午睡時の様子
2025年1月29日(水)13:20~13:50(午睡時間帯)に東綾瀬保育園を視察させていただいた際の園内の様子です。
0歳児保育室
同じ部屋の中で、午睡をする子としない子が場所を分かれて過ごしていました。
午睡をしない子は保育士さんと一緒に遊んでいました。
1歳児保育室
1歳児のうち月齢の低い子の保育室。静かに午睡していました。
1~2歳児保育室
1歳児のうち月齢の高い子と2歳児のうち月齢の低い子の保育室。静かに午睡していました。
2歳児保育室
2歳児のうち月齢の高い子の保育室。静かに午睡していました。
3歳児保育室
視察の始めの方では、午睡の準備をしていました。
子ども達は、自分の好きな絵本や人形を自分のコットのところに持っていき、自分のタイミングで入眠します。(写真左手前の子は絵本を読んでいます。)
視察の終わりの方に再度保育室を覗いてみると、スヤスヤと眠っていました。
絵本コーナー
2・3歳児クラスで午睡をしない子の一部は、絵本コーナーで保育士さんに絵本を読んでもらっていました。
4歳児保育室
4歳児クラスは、9月頃にはほぼ全員が午睡をしなくなります。
視察の始めの方では、保育士さんから読み聞かせをしてもらっていました。
読み聞かせ後、午睡時間帯に遊んで過ごせる場所である5歳児保育室に移動します。
視察の終わりの方に再度保育室を覗いてみると、午睡することを選択した2人の児童が静かに横になっていました。
(仲良しの2人だけでお昼寝するというのも、子どもにとっては特別感があって嬉しいようです。)
5歳児保育室・園庭
5歳児保育室と園庭は、午睡をしない子ども達が遊んで過ごせる場として機能しています。
視察の始めの方では、3歳児クラスの午睡をしない子ども達が5歳児保育室で遊んでいました。
(この3歳児クラスの子達は、視察到着時には事務室で遊んでいました。園内で自由に遊んでいるのが印象的でした。)
5歳児クラスの子ども達は園庭で遊んでいました。
視察の終わりの方では、3・4歳児クラスの午睡をしない子と5歳児クラスの子が5歳児保育室に集まって遊んでいました。
質疑応答
東綾瀬保育園の視察時に園長の増田先生から教えていただいた内容、および視察後に足立区役所にて子ども施設指導・支援課の方々から教えていただいた内容をまとめました。
1日の保育スケジュールの中での午睡時間の設定について
- 0歳児クラス
- 月齢や入園時期がそれぞれのため、個々の生活リズムに合わせて対応する(午前寝、昼寝、夕寝)
- 生活リズムが一定すると、食後の時間に一定時間入眠する(12時頃から14時30分の間)
- 1歳児クラス
- 月齢の低い子は、4、5月(入園間もない時期含)は、午前寝を必要とすることもあるため、個々に合わせて対応する
- 生活リズムが一定すると、食後の時間に一定時間入眠する(12時頃から14時30分の間)
- 2歳児クラス
- 食後にそれぞれ必要な時間入眠する(13時前後から14時45分の間)
- コットに横になるが寝付けない場合は、自らおもちゃのある場所に向かい遊ぶ
- 3歳児クラス
- 食後にそれぞれ必要な時間入眠する(13時後から14時45分の間)
- コットに横になるが寝付けない場合や睡眠を必要としない子は、自室で遊ぶまたは、4、5歳児の部屋で一緒に遊ぶ
- 4歳児クラス
- 食後に睡眠が必要なお子さんは入眠する(13時30分前後から14時45分の間)
- 9月頃には、ほぼ全員が午睡をしなくなる(体調不良や医療的に午睡が必要な子以外)
- 5歳児クラス
- 基本的には午睡をしない(体調不良や医療的に午睡が必要な子以外)
入眠時の対応について
- 保育士はトントンしての寝かしつけはせず、子ども自身が午睡するかどうかを選択し、保育士はそれを見守る
- 眠そうな子には、「眠くなってきた?一緒にお布団行く?」というような声掛けは行う
- 子ども達は自分のタイミングで寝る。昼食後に少し遊んでから寝たり、好きな絵本や人形を自分のコットに持っていって寝ることができる
- 途中で目覚めた子について、強制的にその場にいさせることはなく、絵本を読んだり、おもちゃで遊んだりすることを子どもが選択する
午睡をしない児童の保育について
- 園全体で全部の児童を保育するイメージ(保育士同士がクラスの垣根を越えて連携し合う)
- どうすれば園全体で児童をみることができるか、保育士同士で話し合いながら体制を作ってきた(最初から無理と決めつけずに、まずはやってみながら改善を重ねることが重要)
- 保育士の休憩は、45分を2回に分けるなどして、保育士同士で声を掛け合いながら取れるタイミングで柔軟に取るようにしている
- 4歳児の一斉午睡廃止に伴い、各園に4時間の保育補助を配置した
午睡対応の転換期における対応について
- 平成24年度から5歳児の一斉午睡の見直しを進め、平成25年7月から4歳児の一斉午睡も廃止
- 各園には、生活リズムアンケート調査(平成24年2月に実施した足立区内の3歳から6歳の幼児約2,500人の生活実態調査)の結果を伝え、幼児の午睡についての研修を行い、理解を深めた
- 江戸川大学特任教授の福田一彦先生に、職員向け研修兼保護者向け講演をしていただいた(平日・土曜の計2回実施)
- 一斉午睡を廃止する際には、足立区から保護者宛に説明文書を出すとともに、各保育園で保護者会や個別説明などを実施した
- 一斉午睡の廃止後に、園長および保護者を対象に検証アンケートを実施した
一斉午睡を廃止した効果について
- 子ども達の生活リズムが安定した。一斉午睡をしていたときは夜寝るのが遅く朝なかなか起きれなかった子が、早く寝て早く起きて朝ご飯をちゃんと食べられるようになった。
- 保育士側も「寝かしつけなければならない」というストレスが無くなり、子どもの気持ちに寄り添った対応ができるようになった
保育実践振り返りシートについて
- 平成30年4月に保育実践振り返りシートの初版を作成したときから、「虐待等の行為」という大項目の中に「4・5歳児は一人一人の状態を把握し、午睡の必要の無い子どもを無理やり寝かせていない」という項目を入れていた
- 上記項目を入れた経緯は、平成29年3月31日に各省庁から告示された保育所保育指針、幼稚園教育要領、認定こども園教育・保育要領が同時に改定されたことに伴ったもの
- 保育所保育指針「第1章3(2)オ」には、「睡眠時間は子どもの発達の状況や個人によって差があることから、一律とならないよう配慮すること」と規定されている。そのため、無理に寝かせることは、してはいけない行為と捉えている
- 保育実践振り返りシートは、民間保育園も含めて足立区内のすべての保育園に配布している
- 保育園を巡回する際に、保育実践振り返りシートをもとにチェックするよう依頼している
所感
足立区立東綾瀬保育園では、子ども達がその日の自分の体のリズムに合わせて、午睡をしたり遊んだりすることを選択できており、まさに保育所保育指針で求められている通りの理想的な午睡対応が実現されていました。
午睡をする子は、決められた時間に一斉に入眠するのではなく、絵本を読んだりしながら自分のタイミングで入眠できるようになっており、午睡の入眠の仕方も子どもの個性が尊重されていると感じました。
また、午睡をしない子は、園庭や5歳児保育室や絵本コーナーなど、思い思いの場所で楽しく過ごしており、それぞれの場所で保育士さんがクラスの垣根を越えて温かく保育している様子も非常に印象的でした。
今回の視察をふまえ、「つくば市でもやればできるはず!」と確信しましたので、引き続き市に働きかけてまいります。
政策の進捗状況は、こちらで随時更新させていただきます。
視察を快く受け入れてくださった足立区立東綾瀬保育園の皆様、足立区子ども家庭部子ども施設指導・支援課の皆様、本当にありがとうございました!